盗聴:HGW XX/7

 映画「善き人のためのソナタ」。
 2006年アカデミー賞の外国語映画賞などに輝いたドイツフィルム。ドイツの映画は殆どみることがなかったが、なかなかいい。深夜に放送されていたこの映画を5時近くまで見てしまった。
 ハリウッドタッチのスピーディーで掃除機の吸引のようなストーリー展開ではなく、どんどんと人の心を絡め取っていくような、そんな話だった。派手さのあるシーンが少なく静かな表現なだけに、演技や言葉尻に重みを与えている気がする。そして最後のセリフがちょっと粋だ。
 監視社会と人間、芸術と愛。社会主義で疲弊していく様子が描かれる登場人物たちにとって、人間らしく生きるために一番失いたくなかった大切なもの。それと対称化されるもの。
 タイトルにもなっているソナタは、2つずつ弾き出される音が連呼する心臓の心室と心房の動きという印象もあって人間的にもこだまして響くし、描かれるシュタージ(諜報員)の活動と重ねれば、なにか見えないものがついてきてひきずるような印象に悲しい聴き方もできる気がする。
 この映画の原題ついては、たまたま検索でみつけた「憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>:映画『善き人のためのソナタ』」(ネタばれあり)に詳しい。ドイツ語で「Das Leben der Anderen」、英語版では「The Lives of Others」となっている。「Lives」も「Others」も訳しにくいところで直訳すれば「他人の生活」であって監視社会のイメージに合致するが、「誰かの生き方」など別の捉え方もできなくない。また日本語版の予告編と違って、英語版の予告編はソナタに主眼を置いていないつくりになっているのも考えると、精巧な脚本で描かれているものに深みが出る。
 長く書きたいけれども、わずかこれだけの文章に考えすぎで2時間かかってしまった。内容の本筋を書くのはこれから見る人に申し訳ないので、心のメモにしておきたい。
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