刺激:考えさせられる質問

 ひとつの質問でいろんなことを引き出す問いかけをする能力にはいつも憧れを感じる。いつかそれができる人間になりたいと思ってきたものの、自分に対してそういった質問をされることにこんなに答えが用意できていなかったものかと振り返らされるものだとは考えてもみなかった。今日はいままでの人生で一番鋭い質問を受けたのだ。

 「What would you do if you were a Prime Minister of Japan?」

 考えさせられる質問というのは、異なるバックグラウンドを持っている人から受ける方がよりインパクトが大きいように思う。この質問を留学生から受けたとき、どこまでも黙りこくってしまった。

 この質問は、何を課題として捉えているのか、何を理想・目標としているのか、そのためにどう行動すべきかをすべて示す内容を求めている。日頃何を考えているのかを問うことで、どんな人間であるのかも一言で引き出そうとするのだ。この優れた質問を初対面の人間に対して投げかけられる彼はとてもスマートだと素直に感じた一方で、普段考えていれば用意できていたであろう答えがまったくもって白紙であった自分には軽蔑以外に与えられる評価がない。その場で答えられなかったことを憂うとともに、帰り道で考えてみたことを書き連ねてみようと思う。

 自身は何を課題ととらえているのか。

 ひとつは「住まうこと」について、特に「家庭」の定義の限界だ。夫婦別姓、同性婚、難民の無国籍児、シェアハウス・コーポラティブハウジングでの法制課題、国籍や宗教による入居・就職の支障、育児・介護失職、子どもや高齢者・障碍者への虐待、野宿生活者など、どうもベース部分の「暮らすこと」についての支障を抱える人が少なからずいるように思う。自治体レベルでは上位法が支障となって柔軟な対応ができない面が多い以上、国家的な取り組みが必要であり、もし首相であるならばその先頭に立ちたいと思う。
 この点については仮に一人でも幸せに暮らせる社会づくりを目指すべきだというのが、持論である。血縁や婚姻をベースにした私人間の共助に頼り切ることなく、一人で生きていく人も、パートナーと生きていく人も、子どもや高齢者と暮らす人も、身寄りのない介助を必要とする人でも、どんな人も文化的な生活を営むことができるようにすべきであると思っている。一人ではどうにもならないことを何とかするのがやはり社会なのである。これはすべての人が同じ暮らしをすることを要求するわけでもなく、自由を保障し、努力や工夫を認め合い、互いの幸福を尊重し合うことができて、自分も他者も人間として生きていくうえで支障を感じなければならないことがなくなるようにするのであれば、新しくても古くても、資本主義的でも共産主義的でもこだわる必要がないだろうというのがベースにはあると思う。ひとことで言えば「生きづらさの削減」であり、ここだけを捉えれば現代の課題への対処に終始してしまう側面もあるが、やはりマイナスをゼロにすることは優先せねば、と考えるのは当然かもしれない。留学生から「アオキガハラ」という言葉が聞かれないような国であるべきだろうと思う。
 ドラスティックな政策として掲げるとすれば
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◎家族制度の抜本改革
・戸籍の廃止
・ともに生きるグループ登記制度(血縁・婚姻・性別・国籍・人数・暮らす場所を問わず、何らかの法的手続きを共同または代行できるグループとして構成員の同意をベースに登記)
・行政書類の姓名を分けないフルネーム欄を標準化
・住所ベースの手続き廃止
・扶養家族の枠組み廃止

◎職住近接・柔軟な働き方
・地価抑制(50%減)
・同一労働同一賃金化
・雇用形態の定義廃止
・人材派遣業廃止
・フレックスタイム義務化

◎くらしの総合窓口の設置
…住居・働き方・家族支援についての駆け込み寺的な総合行政窓口
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といったところだろうか。諸問題を生む可能性はあるのだが、フレキシブルな暮らし方を促進するのであれば抜本的に発想を変えることを厭わないでいいと考えている。

 さらにゼロをプラスにしていく面も含めて考えてみる。

 将来を見据えた「国づくり」をするにあたっての観点では、いつでも自然と何かを学べるような制度設計をベースにした学習機会を設けた方がいいと考えている。それは国家という枠組みに囚われず、多様な視点を自分のものにすることであり、一人一人が気付きを得られるチャンスづくりであり、クリエイティブな情報発信であることこそ、未来型の国づくりだと思う。
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◎海外市民大使交流制度
 …バックパッカーには戦争を煽る人がいないと思うので、年齢を問わず海外にどんどん行ってみることを推奨すべきだと思う。抽選で選ばれたら国費補助で1年任期で市民大使として海外訪問をしたり交流イベントに率先して参加できるようにする。その際の休学・休暇・休職で不利にならないよう裁判員並みの保護をする制度を整える。

◎社会人ラーニングデー・ラーニングチケット制度
 …就職後にも時短で学業に取り組めるようにするため、決めた曜日に全休?半休を取得できるフレックスタイムを義務化。大学や専門学校だけでなく市民大学やオンライン講座、図書館の利用なども対象とする。業務日程以外の学習で費用補助使えるラーニングチケットと選択的に取得できる。

◎全国民オンライン確定申告義務化
 …国民が政治に関心を持たなくなっているのは納税者意識の低下によるところもあると思う。会社員の年末調整は廃止し、全国民確定申告にする。確定申告は年度一括ではなく誕生日ベースで行うことで税務処理は時期分散させる。属性を問わず平等にするため扶養控除・生命保険・地震保険などの控除は廃止。アファーマティブ政策での税制優遇はチケット制で源泉徴収分から還付を受けられる。それらの設定はすべてオンラインで行い、できない人にはセミナーを開催する。

◎ポイ捨て厳罰化・看板税・空家税
 …100平方cmあたり年間1000円に色別の税率を乗じた値の看板税を導入し、センスの悪い屋外広告が景観に及ぼす影響を軽減させる。景観を害するポイ捨てや落書きには懲罰的な罰金をかける。限られた公共空間の占有の仕方がどうあるべきかを考えるきっかけとして所有者に税金をかけていく。

◎公共デザイナー・プランナー配置
 …グラフィックワークやブランディング、マーケティングを中心とした担当者を全官公庁に設置することを奨励。公務員試験は30代以上の中途採用枠、事務職採用には政策ポートフォリオ審査を導入。企画会議には一般市民を巻き込んだ形を重視し、インハウスでもデザインの力でドキュメントも刷新し、UI/UXの向上を図る。ダサい官公庁のチラシを脱皮して「気付き」にあふれる情報の発信ターミナルにする。
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 財源は、省庁一覧で一番なくてもよさそうな防衛装備庁の解体というのが一番スムーズだと思うのだが、外交上のタイミングもあると思うのでここは総合的に考えたい。
 にしてもこれだけでは感覚的であまりにも観点が少なく政策力が弱いことが露呈してしまう。やはり、首相になろうと思ったことがないので考え中、としておいた方が良いかもしれない。政治家にもなろうと思ったことがないので適当なことを書いてしまった。話を戻そう。

 で、これを全部で英語で言いたかったのだが、
「I hope... everyone lives happily...」
といった、小学生みたいなことしか言えなかったのが恥ずかしくてたまらない。泣きたい。叫びたい。滝に打たれたい。
 日本語で質問されるときよりも、英語で質問されるときの方が鋭さが増すのは、答えること以上に英語力の無さをも指摘してくれるのだから涙しか出てこない。視線が痛い。胸が痛い。頭が痛い。
 留学生のタトゥーに「起死回生」とある。いままさに酷い有様の淵に立っている。このまま崖から落とされそうなくらいの気持ちだ。生き返れるのだろうか、30歳。

※さて、英語の勉強と、社会の勉強をしようか。
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